Mosquitoes regret

喪失と自責の記

結婚記念日

30年目。 夫を喪って半年後、勧められて通い初めた精神科も3年を過ぎた。 「貴方はだいぶ前から鬱だったんじゃないの?」 持参したこれまでの顛末と略歴を読み、開口一番そう言われた。 身体の自由と認知機能を失ってこの世を去らねばならなかった夫の無念さ…

幼な子

唐突にわかった事がある。 病に伏した夫の枕元で、私は本当は「行っては嫌だ、私はどうすればいいの?」と泣きぐずりたかったのだ、と。 実際にはそんな駄々捏ねをして、これ以上夫を追い詰めるなんて出来なかった。 精一杯の演技。 「大丈夫、なんて事ない…

『死なない子ども』

昨日、三鷹の天命反転住宅に行って来た。 荒川修作の名を知ったのは数日前だ。 オートポイエーシスについて知りたくて、河本英夫さんの本をあれこれ見ている時に、その奇天烈な建築を知った。 岐阜と愛知に大掛かりな魅力的な施設もあるが、距離的に現実的に…

RE:BORN 又はUPDATE

夫の、いわゆる死で、私も死んだのだ…と思った。 でも違った… あの瞬間、世界が滅亡したのだ。私を含めて。 私は夫の出先機関、デバイスとして、新たに生まれた世界に生まれ変わった…言わばバージョンアップされて。 生まれたてだから上手く歩けなくても仕方…

当事者

私は夫殺しの衣に袖を通した。 漆黒の闇と無数の棘で出来たそれを、「着なくていいよ」と言って貰う為に自らを告発してきた様に思う、そこまでの罪ではないよ、と言って貰いたくて喚いて来たような気がする… いや… 私にそれを着る権利があるのか…自信がなか…

Deathマニア

私は夫に「貴方が必要だ」と伝えられただろうか… 愛する職場からも距離を置かれ、どんなに無念だったろう、でも一番大切なのは家族だと貴方は言ってくれた、その妻と息子は貴方を大切に出来たのかな? 貴方無しで私がどうなるかは貴方にはわかってたよね、あ…

地獄巡り

グリーフの会でいろいろな人に会う。 Twitterでもたくさんの人と通り掛かる。 「最愛の人を亡くしました」 そう躊躇無く語る人達… 還りたい、戻りたい、幸せだったあの人との人生に… 私は何処まで遡れば、「還りたい日々」に辿り着けるだろうか… 先日のグリ…

それぞれの悲嘆

伴侶を喪っての哀しみにもいろいろあるな… amazonのカゴに入れて「今回は買わない」と出した物を削除してなかった物を手繰って、夫の闘病にアレコレ悩んで入れたり出したりした高カロリーゼリーやとろみ剤、スプーン等などを引き出して、あの頃の自分に再会…

反出生主義

その言葉は最近Twitterで知った。 この世は地獄。 「生まれて来ない方が良かった」 「だから産まない」 そう言う思想があるとは知らなかった10代の頃、私は親に 「親には産むか産まないか選択肢がある。子どもにはないじゃないか」 と言った事がある。 何か…

夏の大三角

夏の大三角を教えてくれたのは夫だった。 Twitterで流れて来たこのオブジェ(根本で立ち上げて立体になる)を見て、急遽creemaに登録して購入した。 https://twitter.com/AveQyf/status/1653962831233007616?t=-Yji1WLuKxxkBkbvL3BWrQ&s=19 【ものづくりの部屋…

GW前

夢を見た。 引っ越した家は小さくてそこそこ古い、けれど暖かく、庭が広い。 洗濯物をたくさん干して、夫と息子の水筒を洗って、冷蔵庫から麦茶を出す、夫は空を見て雨を気にしてる、確かに雲が少し夕焼けになりながら広がって来て、パラパラ雨が落ちて来て…

誰そ彼

夢の中で、夫を誘惑するその女を罵倒し掴み合いのケンカしてた。 その女は友人(実在)の友達らしい、私は怒りに任せてその辺の紙に悪態やラクガキをしまくって、気が付くと友人の大切な思い出の品にまで書いてしまっていた… 私は、許して貰えないだろう…と思…

健闘を祈る

ギター侍が居た。 乗り換えで、1番近い空席が其処だったから座ったら、ギターが大きくはみ出してたので、押す形となった。 すいてたら構わないだろうけど、もう混んで来てるし、常識的にハダカのギター抱えてるのは『?』でしかなかった。 読みかけの本を開…

酸欠金魚パクパク

気が付けば半年近く間が空いてしまった… ふり返って、哲学カフェに行き出した頃からか…似顔絵もありがたい事に、今お二方に待って頂いてる。 いくつかの哲学カフェに参加して、その中にデスカフェとタイトル付けられた対話会を見付けて、今はそこをホーム的…

面影屋ーおもかげやー始めました。似顔絵描きます。

3ヶ月ぶりの精神科通院。 新しいスマホの写真も試す為に少し歩いた。 3ヶ月の間に「これは先生に訊いてみよう、アレも確認しておこう」と思う事がたくさん積み上がる。 実際に診察室に入ると、まず、初診で泣きながら話す私の話を聞きながら、死に向かう夫の…

ポルタの銀のバケツ

かつて横浜駅東口ポルタに設置されていた銀のバケツの動く彫像『光の雨』(作者・新宮晋) いつ、どう言う理由で無くなったのか判らないが、設置は1981年との事。 この前で待ち合わせした人々が、一体どれ位いるだろうか… 私と夫もその一組だった。 ググっても…

描かせてくれてありがとう

昨日、グリーフ女子会があって、普段乗らない電車に乗ったら間違えて反対方向に走り出した。 隣の駅でホームの反対側の列車を待てばいいのだけど、ふと、その幾つか先の駅まで行く事にした。 あれは、まだ付き合い初めの頃だったろうか…まだ開発途中の駅前の…

新たな試み

似顔絵を描きます。 死別されたご遺族にお声掛けさせて貰って、お二人に協力して頂き、お試し運転してます。 今、無職の身なので、市で募集があった『就労支援講座』に応募してみました。 応募者多数で抽選だったそうですが、当選して、2時間キャリアコンサ…

ARIA

アリアとは叙情的、旋律的な特徴の強い独唱曲、オペラ『蝶々夫人』の『ある晴れた日に』など、聴かせどころになる…らしい… airと同根で、空気の意味も… 夫の線画を私が色付けしデザインしたポストカードを、縁あった人に受け取って貰って来た、が、ふと息子…

1年

このブログを開設して1年が過ぎたみたいだ。 googleフォトが『去年の写真』で墓苑の写真を提示してきた、そうだ、納骨を期に自分の罪と向き合いたい…その場所としてここを作った。 足掻いて、手を彷徨わせて、つかまる何かを探して…踏み出し続けた1年だった…

ヘリンボーン

前の記事で書いた、夫の友人に無理を承知でコピーが欲しいと、ダメ元でも頼んだのは、夫が高校〜大学の頃に、その友人達と一緒に撮影した自主映画。 今年の3月の月命日に夢を見た。 何処か小さな劇場?舞台の上で準備している人影の中に夫も居る。 楽しそう…

もうすぐ三回忌

丸2年、毎日さいごの刻を何度も脳内再生するから、つい昨日のようでもあり、2年…と聞くとまだそんなか、と思う程遠い昔のようにも感じる不思議… 時間が、時空が、あの日捻れたままただ流されてここに居る… 訳がわからない… 意味がわからない… 今もわからない…

猫好きさんは読まないで下さい

暑くなり始めた頃だったろうか…時々猫の声を聞いた。 ご近所で飼われていた猫は数年前死んだと聞いた。 この辺りでは猫は嫌われる傾向があって、あからさまに猫に敵意を示す若いお母さんに、動物なんでも好きな私は「そういう人も居るんだ…」と意外だった。 …

草遍路

隣家と境界線を接する狭い庭の一画が、思いがけず生い茂っているのに気が付き、昨日の朝イチで刈り込み作業をした。 中途覚醒は早朝覚醒になって、最近はもう明るくて二度寝も難しい…それなら隣人が動き出す前、日差しがキツくなる前に作業すればいいのでは……

愛するとは…ルー・ゲーリック・デーに寄せて

「愛にはエロス、アガペー、あとなんだっけ?3つあるのよ、尊敬はアガペーだから、それは愛よ」 私は夫の事を、全人類で1番尊敬してる、けど、触れない抱きしめられなくて寂しい悲しい…と言う感情は、他の伴侶喪失者よりも弱いと思う、それはグリーフサポー…

END展と友との邂逅

END展に行って来ました。 五十嵐大介さんの生カラー原稿を間近でマジマジ見る事が出来て至福でした… 私は歪な死別者なので、傷付くかも知れなくても、近付いて見たい、知りたい、考えたい人です。 そうでない人にはオススメしません。 私は行って良かった…可…

海の幽霊

米津玄師『STRAY SHEEP』には、気になっていながらまだ観ていなかった劇場版アニメ『海獣の子供』のテーマ曲『海の幽霊』も収録されていた。 原作の漫画の作者、五十嵐大介さんは大好きな作家さんだ。 夫と半同棲になった頃、夫が定期的に買っていた雑誌に『…

迷える子羊

蚊ですが… 米津玄師さんのアルバム『STRAY SHEEP』が生協で取り扱われたので買ったのはいつだったろう。 発売日を見たら、夫の葬儀の日だった。 『lemon』は戦友を喪った時、 『パプリカ』は夫と聴いた思い出、 他にも、疎い私でも耳にした事のある曲の入っ…

君をのせて

アルバムから零れた写真が何枚か出て来た。 その中に、一時親子3人を乗せて走ってくれたサイドカーの写真があった。 子どもが幼稚園の頃、夫が買いたい物があると言う。 我が家は家計は夫が管理していたが、勝手に買ってくる様な事はしない人だった。 中古の…

剣呑 剣呑

夜寝る前には夫に「助けてね、守ってね」ではなく「教えてね、導いてね」と祈るようにした。 私は幸運な事に、助けて貰う事も守ってもらう必要もない現状だ。 今月の家賃が払えないとか借金取りに怯えなくて済んでいる、今の所、家族に重大な病気も見つかっ…