死別
唐突にわかった事がある。 病に伏した夫の枕元で、私は本当は「行っては嫌だ、私はどうすればいいの?」と泣きぐずりたかったのだ、と。 実際にはそんな駄々捏ねをして、これ以上夫を追い詰めるなんて出来なかった。 精一杯の演技。 「大丈夫、なんて事ない…
夫の、いわゆる死で、私も死んだのだ…と思った。 でも違った… あの瞬間、世界が滅亡したのだ。私を含めて。 私は夫の出先機関、デバイスとして、新たに生まれた世界に生まれ変わった…言わばバージョンアップされて。 生まれたてだから上手く歩けなくても仕方…
私は夫に「貴方が必要だ」と伝えられただろうか… 愛する職場からも距離を置かれ、どんなに無念だったろう、でも一番大切なのは家族だと貴方は言ってくれた、その妻と息子は貴方を大切に出来たのかな? 貴方無しで私がどうなるかは貴方にはわかってたよね、あ…
伴侶を喪っての哀しみにもいろいろあるな… amazonのカゴに入れて「今回は買わない」と出した物を削除してなかった物を手繰って、夫の闘病にアレコレ悩んで入れたり出したりした高カロリーゼリーやとろみ剤、スプーン等などを引き出して、あの頃の自分に再会…
その言葉は最近Twitterで知った。 この世は地獄。 「生まれて来ない方が良かった」 「だから産まない」 そう言う思想があるとは知らなかった10代の頃、私は親に 「親には産むか産まないか選択肢がある。子どもにはないじゃないか」 と言った事がある。 何か…
夢を見た。 引っ越した家は小さくてそこそこ古い、けれど暖かく、庭が広い。 洗濯物をたくさん干して、夫と息子の水筒を洗って、冷蔵庫から麦茶を出す、夫は空を見て雨を気にしてる、確かに雲が少し夕焼けになりながら広がって来て、パラパラ雨が落ちて来て…
夢の中で、夫を誘惑するその女を罵倒し掴み合いのケンカしてた。 その女は友人(実在)の友達らしい、私は怒りに任せてその辺の紙に悪態やラクガキをしまくって、気が付くと友人の大切な思い出の品にまで書いてしまっていた… 私は、許して貰えないだろう…と思…
ギター侍が居た。 乗り換えで、1番近い空席が其処だったから座ったら、ギターが大きくはみ出してたので、押す形となった。 すいてたら構わないだろうけど、もう混んで来てるし、常識的にハダカのギター抱えてるのは『?』でしかなかった。 読みかけの本を開…
気が付けば半年近く間が空いてしまった… ふり返って、哲学カフェに行き出した頃からか…似顔絵もありがたい事に、今お二方に待って頂いてる。 いくつかの哲学カフェに参加して、その中にデスカフェとタイトル付けられた対話会を見付けて、今はそこをホーム的…
3ヶ月ぶりの精神科通院。 新しいスマホの写真も試す為に少し歩いた。 3ヶ月の間に「これは先生に訊いてみよう、アレも確認しておこう」と思う事がたくさん積み上がる。 実際に診察室に入ると、まず、初診で泣きながら話す私の話を聞きながら、死に向かう夫の…
昨日、グリーフ女子会があって、普段乗らない電車に乗ったら間違えて反対方向に走り出した。 隣の駅でホームの反対側の列車を待てばいいのだけど、ふと、その幾つか先の駅まで行く事にした。 あれは、まだ付き合い初めの頃だったろうか…まだ開発途中の駅前の…
このブログを開設して1年が過ぎたみたいだ。 googleフォトが『去年の写真』で墓苑の写真を提示してきた、そうだ、納骨を期に自分の罪と向き合いたい…その場所としてここを作った。 足掻いて、手を彷徨わせて、つかまる何かを探して…踏み出し続けた1年だった…
丸2年、毎日さいごの刻を何度も脳内再生するから、つい昨日のようでもあり、2年…と聞くとまだそんなか、と思う程遠い昔のようにも感じる不思議… 時間が、時空が、あの日捻れたままただ流されてここに居る… 訳がわからない… 意味がわからない… 今もわからない…
隣家と境界線を接する狭い庭の一画が、思いがけず生い茂っているのに気が付き、昨日の朝イチで刈り込み作業をした。 中途覚醒は早朝覚醒になって、最近はもう明るくて二度寝も難しい…それなら隣人が動き出す前、日差しがキツくなる前に作業すればいいのでは……
END展に行って来ました。 五十嵐大介さんの生カラー原稿を間近でマジマジ見る事が出来て至福でした… 私は歪な死別者なので、傷付くかも知れなくても、近付いて見たい、知りたい、考えたい人です。 そうでない人にはオススメしません。 私は行って良かった…可…
アルバムから零れた写真が何枚か出て来た。 その中に、一時親子3人を乗せて走ってくれたサイドカーの写真があった。 子どもが幼稚園の頃、夫が買いたい物があると言う。 我が家は家計は夫が管理していたが、勝手に買ってくる様な事はしない人だった。 中古の…
夜寝る前には夫に「助けてね、守ってね」ではなく「教えてね、導いてね」と祈るようにした。 私は幸運な事に、助けて貰う事も守ってもらう必要もない現状だ。 今月の家賃が払えないとか借金取りに怯えなくて済んでいる、今の所、家族に重大な病気も見つかっ…
先日TVで石垣島を旅する番組を息子と並んで観た。 石垣島には、夫と二人で、その後息子と3人で旅行した。 3人で行ったのはもう16年前… 子の年齢的に、無邪気にはしゃぐ姿をビデオに写せるラストチャンスだと思って、私は結構頑張って撮影した。 いずれ育っ…
昨夜、またあの日の事を考えていた。 あの日、もっと素早く吸引していれば… 蘇生処置が出来ていれば… あの時、逝かなかったのだろうか… 遠くない先でその時は必ず来るとしても、あの時、回避出来たのだろうか… もし、やれる事を全部やったとして、それでも引…
小正月も過ぎてしまった。 クリスマスから年末年始は、去年程ではないにしろ辛い時期だ。 今年は世間的には喪中ではないが、とてもおめでとうと年賀状を書く気にはなれず… 来た年賀状にも、寒中見舞いとして返事を書いた。 来年もその先も多分こちらからは出…
茶の間の押入れの下半分を、私の趣味の道具や材料等等が占めている。 もう気が乗らなくなった物や、いつか使うかも…と、かけた元手を考えてケチ臭く捨てられない物も多くて、整理しなければとは思うが、触れば時間を喰い潰すのが目に見えてるから触れないで…
コッソリと置いて来た手紙と茶菓子、それに手前味噌のフォトブックが、無事にグリーフサポートの世話人の手に渡った様で、丁寧なお礼のメールを頂いた。 土曜と言う事もあり、そうかも知れないと思った通り多忙であった為、置き去りは感謝されたが、せっかく…
本人は苦手意識があって、多くは描いてないが、夫の描く絵は邪心がなく、技巧を追わず、とても魅力的だと私は思っている。 先日、捜し物をしていて、何枚か彼の線画が出て来て、とても嬉しかった。 思い付きでスマホでスキャンして、アプリで私が色を乗せて…
前前記事と前記事の、グリーフワークサポートを受けた帰り道、いや、行きの道すがらも、沿道の空気や佇まいがとても好ましく感じられて、この道を息子にも教えてやりたいと思いながら歩いた。 所謂観光地だが、雨の平日午後だった事もあり、人の姿はまばらだ…
グリーフワークを対面でサポートして貰って、自分が縋り付くように自責に拠り所を求めていた事、それは自身の苦しさ辛さ、自分を醜いと、汚いと罵りたい、この穢れた自分が赦せない…と言う、全て『自分優先』から来ている事を指摘され、今はここでない場所に…
我執は自分に対する執着で、仏教ではその克服が重要な課題とされる。 意識ある生きものを有情といい衆生というが、その主体として、恒常・不変の自我が実在すると考えて執着することを言う。すべての存在に実体があると考える「法執」と対をなしている。この…
夫との死別以前、父を施設に一人置いて、生きる事、死ぬ事、介護と言う事について夢遊するように頼り縋れる何かを探して彷徨って、本を読み、話を聞き、心に残りながら確かには理解する事が出来ずに今日まで来た言葉の1つが「ユマニチュード」だった。 昨日…
今朝から読み始めた、かつて朗読した本が、溢れる程いろんな気付きや新たな思索の種を与えてくれていて、身体の内側がまだ震えている。 最初の『つらいかた』20ページ程を読んだだけで、ああ…当時の私の中に入りようが無かっただろうな…あの頃、私は文中の御…
昨日、注文した本がもう届いた。 以前、朗読ボランティアでお預かりしたのは、この文庫の発行前に刊行された単行本だったのだろう。 単行本1995年2月刊行、 文庫本1998年第一刷発行となっている。 手軽な文庫で探したが、新品が見つからず古本を取り寄せたの…
回復とは? 私はどの状態を目指して治療を受けているのだろう… 夫との死別から繋がった精神科だが、Dr.が指摘した様に私の鬱はもっと以前からのもので、一体いつまで遡れば健康で戻りたい自分に辿り着けるのだろう… ふと、 結婚して仕事を辞めた後、朗読ボラ…