Mosquitoes regret

喪失と自責の記

AC

幼な子

唐突にわかった事がある。 病に伏した夫の枕元で、私は本当は「行っては嫌だ、私はどうすればいいの?」と泣きぐずりたかったのだ、と。 実際にはそんな駄々捏ねをして、これ以上夫を追い詰めるなんて出来なかった。 精一杯の演技。 「大丈夫、なんて事ない…

RE:BORN 又はUPDATE

夫の、いわゆる死で、私も死んだのだ…と思った。 でも違った… あの瞬間、世界が滅亡したのだ。私を含めて。 私は夫の出先機関、デバイスとして、新たに生まれた世界に生まれ変わった…言わばバージョンアップされて。 生まれたてだから上手く歩けなくても仕方…

それぞれの悲嘆

伴侶を喪っての哀しみにもいろいろあるな… amazonのカゴに入れて「今回は買わない」と出した物を削除してなかった物を手繰って、夫の闘病にアレコレ悩んで入れたり出したりした高カロリーゼリーやとろみ剤、スプーン等などを引き出して、あの頃の自分に再会…

反出生主義

その言葉は最近Twitterで知った。 この世は地獄。 「生まれて来ない方が良かった」 「だから産まない」 そう言う思想があるとは知らなかった10代の頃、私は親に 「親には産むか産まないか選択肢がある。子どもにはないじゃないか」 と言った事がある。 何か…

誰そ彼

夢の中で、夫を誘惑するその女を罵倒し掴み合いのケンカしてた。 その女は友人(実在)の友達らしい、私は怒りに任せてその辺の紙に悪態やラクガキをしまくって、気が付くと友人の大切な思い出の品にまで書いてしまっていた… 私は、許して貰えないだろう…と思…

酸欠金魚パクパク

気が付けば半年近く間が空いてしまった… ふり返って、哲学カフェに行き出した頃からか…似顔絵もありがたい事に、今お二方に待って頂いてる。 いくつかの哲学カフェに参加して、その中にデスカフェとタイトル付けられた対話会を見付けて、今はそこをホーム的…

面影屋ーおもかげやー始めました。似顔絵描きます。

3ヶ月ぶりの精神科通院。 新しいスマホの写真も試す為に少し歩いた。 3ヶ月の間に「これは先生に訊いてみよう、アレも確認しておこう」と思う事がたくさん積み上がる。 実際に診察室に入ると、まず、初診で泣きながら話す私の話を聞きながら、死に向かう夫の…

1年

このブログを開設して1年が過ぎたみたいだ。 googleフォトが『去年の写真』で墓苑の写真を提示してきた、そうだ、納骨を期に自分の罪と向き合いたい…その場所としてここを作った。 足掻いて、手を彷徨わせて、つかまる何かを探して…踏み出し続けた1年だった…

猫好きさんは読まないで下さい

暑くなり始めた頃だったろうか…時々猫の声を聞いた。 ご近所で飼われていた猫は数年前死んだと聞いた。 この辺りでは猫は嫌われる傾向があって、あからさまに猫に敵意を示す若いお母さんに、動物なんでも好きな私は「そういう人も居るんだ…」と意外だった。 …

END展と友との邂逅

END展に行って来ました。 五十嵐大介さんの生カラー原稿を間近でマジマジ見る事が出来て至福でした… 私は歪な死別者なので、傷付くかも知れなくても、近付いて見たい、知りたい、考えたい人です。 そうでない人にはオススメしません。 私は行って良かった…可…

海の幽霊

米津玄師『STRAY SHEEP』には、気になっていながらまだ観ていなかった劇場版アニメ『海獣の子供』のテーマ曲『海の幽霊』も収録されていた。 原作の漫画の作者、五十嵐大介さんは大好きな作家さんだ。 夫と半同棲になった頃、夫が定期的に買っていた雑誌に『…

君をのせて

アルバムから零れた写真が何枚か出て来た。 その中に、一時親子3人を乗せて走ってくれたサイドカーの写真があった。 子どもが幼稚園の頃、夫が買いたい物があると言う。 我が家は家計は夫が管理していたが、勝手に買ってくる様な事はしない人だった。 中古の…

剣呑 剣呑

夜寝る前には夫に「助けてね、守ってね」ではなく「教えてね、導いてね」と祈るようにした。 私は幸運な事に、助けて貰う事も守ってもらう必要もない現状だ。 今月の家賃が払えないとか借金取りに怯えなくて済んでいる、今の所、家族に重大な病気も見つかっ…

童神

先日TVで石垣島を旅する番組を息子と並んで観た。 石垣島には、夫と二人で、その後息子と3人で旅行した。 3人で行ったのはもう16年前… 子の年齢的に、無邪気にはしゃぐ姿をビデオに写せるラストチャンスだと思って、私は結構頑張って撮影した。 いずれ育っ…

絶対零度

昨夜、またあの日の事を考えていた。 あの日、もっと素早く吸引していれば… 蘇生処置が出来ていれば… あの時、逝かなかったのだろうか… 遠くない先でその時は必ず来るとしても、あの時、回避出来たのだろうか… もし、やれる事を全部やったとして、それでも引…

スクワランオイル

夫に似て肌が弱い息子の髭剃り後に夫が使っていたスクワランオイルがいいんじゃないかと、まだあっただろうと探したのに見つけられなかった。 納骨を踏ん切りに、洗面台周りを少し片付けた時に、使いかけは捨てたかも知れない。 それとも… 生前からもう切ら…

引き継ぐ

前前記事と前記事の、グリーフワークサポートを受けた帰り道、いや、行きの道すがらも、沿道の空気や佇まいがとても好ましく感じられて、この道を息子にも教えてやりたいと思いながら歩いた。 所謂観光地だが、雨の平日午後だった事もあり、人の姿はまばらだ…

贈り物

グリーフワークを対面でサポートして貰って、自分が縋り付くように自責に拠り所を求めていた事、それは自身の苦しさ辛さ、自分を醜いと、汚いと罵りたい、この穢れた自分が赦せない…と言う、全て『自分優先』から来ている事を指摘され、今はここでない場所に…

我執

我執は自分に対する執着で、仏教ではその克服が重要な課題とされる。 意識ある生きものを有情といい衆生というが、その主体として、恒常・不変の自我が実在すると考えて執着することを言う。すべての存在に実体があると考える「法執」と対をなしている。この…

『恢復する家族』

今朝から読み始めた、かつて朗読した本が、溢れる程いろんな気付きや新たな思索の種を与えてくれていて、身体の内側がまだ震えている。 最初の『つらいかた』20ページ程を読んだだけで、ああ…当時の私の中に入りようが無かっただろうな…あの頃、私は文中の御…

シンクロニシティ

昨日、注文した本がもう届いた。 以前、朗読ボランティアでお預かりしたのは、この文庫の発行前に刊行された単行本だったのだろう。 単行本1995年2月刊行、 文庫本1998年第一刷発行となっている。 手軽な文庫で探したが、新品が見つからず古本を取り寄せたの…

回復、恢復

回復とは? 私はどの状態を目指して治療を受けているのだろう… 夫との死別から繋がった精神科だが、Dr.が指摘した様に私の鬱はもっと以前からのもので、一体いつまで遡れば健康で戻りたい自分に辿り着けるのだろう… ふと、 結婚して仕事を辞めた後、朗読ボラ…

子育て不安→自助グループへ

まず、子どもを死なせない事。 生まれた翌日死んだ弟2の影が過る… 新生児の死因は不明な事が多いらしい。 母は生まれた直後の弟2の顔を見たきり、亡骸には会わせてもらえなかった、当時は母親のメンタルに配慮して会わせないのが一般的だった様だが、母は出…

1番の苦しみ

ここまでの人生で最大の苦しみは夫の病と死だった。 この先、これを越える苦しみがあるとしたら…子を喪うことだろうか… そう思っていた、が、違う。 子が、誰かに陰湿にいじめられる… 多分、これが私に取っての最大のダメージだろう。 子はもう成人、だけど…

荷物

夫はバイク乗りだった。 私は原付バイクで通勤していた事はあったが、大きいバイクの後ろに乗るのは初めてだった。 まして後ろに乗せたことなどない、最初はわからず、運転する夫にしがみついたが、どうやって乗るのが運転しやすいのか尋ねた。 「しがみつい…

機能不全家族からの離脱

実家は、母の不機嫌が支配していた。 何か聞かれても、母の中の望ましい答えを選ばないと不機嫌になる。 面倒なので、なんでもいいと言うと、お前は自分の意志がないと責められた。 そのようなコミュニケーションに馴染んでいた私も、夫との生活で、無自覚に…

この先に…

子どもが独り立ちした後、燃え尽きる『空の巣症候群』に、私はなるだろう… 心血注いだ子育てが終わり、息子は自分の人生を歩く、その背中を涙しながら見送る… その日を怖れながら、子の小さい頃の可愛い服やオモチャを、その先の慰めに取ってある。 アルバム…

使命

私は恵まれてる。 子どもは成人し、社会人となった。 残りわずかとは言え、家のローンも弁済になった。 定年まえだったから満額には届かなくとも、退職金も出た。 大分解約してしまっていたが、会社で入っていた保険からも支払いがあった。 堅実な夫は、一部…

いつの日か 旅する者へ

私は子を見過ぎる母親である事を自覚していて、いつかこの子が巣立つ時、その足を掴まない様に… いつか、近い未来、私と夫の肩を強く蹴って飛び立つ我が子の足を掴んでしまわない様に… それが出来たら、夫に褒めて貰えるだろう、夫の元で安心して泣けるだろ…

遺恨・告知翌日

告知の場には、夫本人と私と息子の他に、私の弟1夫婦にも同席して貰った。 義兄にも連絡を取ろうとしたが、繋がらなかった。 弟には、大学病院に繋がってた時に、私がひとりで抱える事に耐えられなくなって電話した。 この病院は、弟2が生まれ、翌日に死んだ…