Mosquitoes regret

喪失と自責の記

AC

遺恨・告知

後悔なら枚挙に暇がない。 どれもこれも適切だった、良い手だったとは思えない。 その中でも大きな棘となり、日を追うごとに疼くのは、告知とそれに纏わる私の対応… 初見で疑われたALSの正式な診断の為には、いくつもの検査が必要だった。 それ以前に若年性…

野生の母

赤ん坊を連れて夫の待つ自宅へ戻り、新生活の始まり。 春と言ってもまだ寒さも残る、古い木造の貸家に、義父と義兄がエアコンを取り付けてくれた。 なのでうちのエアコンは子どもと同い年だ。 それと、子どもと私が過ごす部屋と廊下を隔てるドアがないので、…

呪い

待望の『家族』となった。 しかし、帝王切開は出産ではあるけど手術。 大学病院は非常に混んでいる為、割と早く退院させられる。 私は出血が多かったせいで術後の回復が芳しくなく、当日になるまでハッキリせず、退院と決まればアレコレ手続きやレクチャーが…

モスキート、母となる

忌まわしい因縁のある病院で、初めての子を産む事は、出来れば避けたかった。 けれど、季節は12月、年末年始を控えて、紹介状のない病院をあたるのも冒険だ… まごまごしてる内に何か急変があったら…そう思うと、あの、弟の亡き骸と対面した病院を選ばざるを…

プレ・モスキート時代

結婚は家庭を作る為のもので、家庭には子どもが居るものだ、と信じて疑わなかった。 子どもを持たないなら結婚する意味はないような気がしていた。 敢えて子どもを持たない夫婦がいる事も、自分達に子どもが授かるかどうかわからない事も、理解はしていたが……

モスキートの言い訳

結婚して幸せな家庭を作る。 ありきたりな、でも、決して努力だけでは叶わない夢だ… その能力も運の良さも持っていないと知っていた、だから公言出来なかった。 前述の通り、私の弟は幼くして入院、手術を経験している。 当時は助からないと診る医師もいた。…

私の現在 2021.10.

私は現在、精神科で抗うつ薬を処方されている。 死別から半年過ぎた今年2月から。 夫の在宅闘病中も、夜間トイレに数回起きるのに付き添う為、中途覚醒が習慣化していた。 死別後は更に入眠障害で、朝刊のバイクの音を聞く事が多かった。 それでも無職だった…

父の事

今日、日付が変われば昨日、父の4回目の命日だった。 なので、父の事を話そう。父は東北の田舎の貧しい鍛冶屋の末っ子だった。 長兄が跡を継ぎ、他の子どもは家を出て自分の食い扶持を得るのが習わしだった。 母親は父が少年の頃、病で死んだらしい。ずっと…

痛みを辿る旅

一周忌が終わったら… 納骨が済んだら… 先延ばしにして来た片付けを少しづつ…と思うけど、彼が使っていた日用品を、仕舞うなり捨てるなりして目に触れなくしてしまう事に、途方もない抵抗がある。まるで、もう居ないみたいじゃない… 体はなくても居るのに…! …