使命
私は恵まれてる。
子どもは成人し、社会人となった。
残りわずかとは言え、家のローンも弁済になった。
定年まえだったから満額には届かなくとも、退職金も出た。
大分解約してしまっていたが、会社で入っていた保険からも支払いがあった。
堅実な夫は、一部のリフォームも済ませた。
なぜ?
私はこんな風に護られるに値する妻じゃない…
夫より子を優先して、夫の病に気付けず、挙げ句ひとりで旅立たせてしまった…
最善を尽くし切ったとは言えない。
どうして、私は夫をこの世に留めておけなかったのか?
私が望んだのではないのか…
本当は、子さえ居れば夫は不要と、私の深い所で願ったのではないのか…夫の死を…
その思いが振り払えない…
私の潜在的な、モスキートとしての呪いが、夫を死に追いやったのではないのか…
こんな私が、夫に護られる理由は…?
私はこんな庇護に値するこれまでを送って来ていない。
理由があるなら、この先の未来に、為すべき使命があるのだろう…
それはなんだろう…
その時に、キチンとその使命を果たせるだろうか…
どうかそれが成し遂げられますように…