Mosquitoes regret

喪失と自責の記

回復、恢復

回復とは?

私はどの状態を目指して治療を受けているのだろう…

夫との死別から繋がった精神科だが、Dr.が指摘した様に私の鬱はもっと以前からのもので、一体いつまで遡れば健康で戻りたい自分に辿り着けるのだろう…


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ふと、

結婚して仕事を辞めた後、朗読ボランティアをしていた事を思い出した。

市で募集していたので問い合わせると、何の資格も講習も必要なく、依頼者の希望する本を自宅で読み上げて録音したテープを送り返すと言うもので、完全な無給ボランティアだと言う。

本とテープは依頼者から直接送られ、返送も直接だったと思う。

私に割当てられた依頼者は…

そこまで思い出して、息が止まった。

病名は定かに思い出せないが、筋肉がだんだん動かなくなる病で、既に寝たきりと言う男性だった…

この事が、今まで記憶の表面に上がって来なかった事は、私が無意識に回避して来たのか、それとも夫と関連付ける事が単純に多忙で出来なったからか…

仮にAさんとする、その当時の依頼者の病状を、私はどう思ったか…

ド素人の私なんかでいいのだろうか…声は低くて滑舌も悪い、漢字を間違えて読んでいたりして、申し訳ない気持ちだったが、「低い声が聞きやすい、間違えて読んでいる箇所は、以前読んでいた本なので大体分かるから大丈夫」と、続けて依頼された。

本とテープに同封してやり取りした手紙が、多分何処かには残っている筈だが、引っ越して市が変わり、すぐに妊娠した事もあって、ボランティアを辞めた。

ご家族からの手紙で、妊娠を祝う言葉を頂いたはずだ。

Aさんとご家族は、その後どうされただろう…

時折思い出しはしたが、出産から続いた嵐の様な気持ちの荒波に流されて、気が付いたら随分遠い所に来てしまった…

夫の診断、闘病の時期に思い出せたら、連絡を取っていただろうか…

いや、あの後のAさんがどうなったか恐ろしくて聞けなかっただろう…

今なら?

以前頂いた手紙を探してみようか…

私の戻りたい回復とは、その辺りだろうか?

まだ、子を持たない、この先どんな未来があるのか知らないあの頃の私も、決して夢に胸を膨らませてた訳じゃないけれど、一緒に歩いてくれる夫を得て、心強かった。

今も、未来が見えないのは同じだが、寄り添ってくれた夫を喪った…

飛び立たせなければならないと覚悟して来た息子への、足枷になってしまうのでは…と言う忸怩たる思いと、一緒に居てくれる事への感謝…

 

そして、Aさんに依頼された本が大江健三郎の『恢復する家族』だった事を思い出し、読み上げたのに内容を覚えていない事にあ然とする…

恢復が読めずにほんぷくと読み上げていた事は覚えているのに…

今、amazonで注文した。

今はこうしてネットで、思い立ったらすぐ先へ進める。

kindle版を購入すれば、読み上げソフト等で人の手を借りなくても読みたい本も読めるのかも知れない。

本当に便利になった…

思い付いて、今住む市の朗読ボランティアを調べてみた。

引っ越して来た当初にも調べたが、やはり講習が必須となっていて、かなり厳しい。

自治体によって色々だが、今はIT化とSNS等のコミュニケーションツールの発達で、個人的に読んで欲しい本を読んでくれる人を探す事も随分楽になったのではないかと思う。

確固たる責任感と使命感なくボランティアをするよりは、朗読サークル等を探す方が私には適しているかも知れない。


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今はまだ、迂闊に動く事は控えたい。

そして、Aさんが選んだ本が大江健三郎のその本、知的障害を持って生まれた我が子との日々を綴った本だった事、その息子さん光さんが私と同い年であった事、私自身が高校時代『兎の眼』を読んで障害児教育に関心を寄せた事(その道に進む事は実現はしなかった)夫がAさんと似た病になった事…それらに何かの意味があるのか…少し落ち着いて考えてみたい。