私は夫殺しの衣に袖を通した。
漆黒の闇と無数の棘で出来たそれを、「着なくていいよ」と言って貰う為に自らを告発してきた様に思う、そこまでの罪ではないよ、と言って貰いたくて喚いて来たような気がする…
いや…
私にそれを着る権利があるのか…自信がなかったのだ。
それは禍々しいけれど、高貴な宝石の様でもあった。
私なんかが着ていいものだろうか…?
当事者、と言う時、夫の死の当事者は夫…
夫を喪失したのは私…そうなのか?
私も夫の死の当事者だ、私たちは夫婦で、チームで、一味で、グルだ、私達は半身をもがれた当事者だ。
仮に、もしも夫の判断で選択した結果であったとしても、『私達』として私もそれを受け容れたのだ…
私達は共犯者だ。
私達はヘマをして、大怪我をした…
半身不随の私達になった…
その責任は『私達』にある。
無数の棘が、夫を喪って蒸発した何かの痕跡のように無数に空いた虚ろな空洞を埋めた…
そして私はやっと共犯者のように『当事者』になれた…
置いて行かれた可哀想な妻ではなく、夫に引導を渡した者として、彼のより近くへ侍る事を許された気がする…
夫の身体を喪うと言う大怪我をしたからと言って『私達』は、今もこれからも『私達』だから、この先も夫と私のコラボ人生は続くのだ。
ハンデを負ったのは自分の、『私達』のせいだから、苦しくても仕方がない、その様に苦しく生き続けるのが『私達』の生なのだ。