迷える子羊
蚊ですが…
米津玄師さんのアルバム『STRAY SHEEP』が生協で取り扱われたので買ったのはいつだったろう。
発売日を見たら、夫の葬儀の日だった。
『lemon』は戦友を喪った時、
『パプリカ』は夫と聴いた思い出、
他にも、疎い私でも耳にした事のある曲の入ったアルバムだけど、買って1年以上聴く気になれなくて、封も切らないまま放って置いた。
これだけじゃなく、全てのCDをかける気になれない…
全ての、自分を楽しませる事が許せない。
鬱のせいもあって、本は読めない。
ゲームも面倒…
あんなに毎晩飲んだお酒も、飲んでも酔えなくなってやめた。
お酒飲んで、CDかけて、それで逃げていた、逃げ切れた現実は終わった。
どうして聴いてみようと思ったのか思い出せない。
初っ端の『カムパネルラ』でビンタされた気がした。
カムパネルラ…それはもしかして…?
ググってインタビュー記事を読んで、やはり『銀河鉄道の夜』のカムパネルラだった…
しかも、歌っているのはザネリだと、米津さんは語っていた。
なんて事…
一気に時間が巻き戻る。
夫と付き合いだした頃、私は文芸系の同人誌に短編漫画を描いていた。
それを彼にも見てもらった。
タイトルは『銀河鉄道の頃』、『銀河鉄道の夜』へのオマージュで、これは偶然だが、作中のカムパネルラに当たる人物の名前が、彼の名と音が一緒だった。
元々好きな名前だったと伝えると、彼は嬉しそうにしてくれた。
私のオマージュも、米津さんと同じくザネリへの感情移入から生まれた。
友が自分を助けて死ぬ…
そんな出来事の後、ザネリは大丈夫なのか?
どうやって生き、どう折り合いをつけていったのか…
心配で仕方なかった。
彼は、拙い漫画を褒めてくれた。
そこまでが今に繋がった。
カムパネルラは早逝する。友を助けて。
夫はカムパネルラだった。
私はザネリ。
私が殺した。死を予言した。
意味のない思い込みだ。わかってる。
善良で、社会の役に立つ人間だった夫を連れ去り、その夫に寄生し、役に立たない粗悪な私が残された…理不尽だ…
私も、風に煽られ、汚れた手のまま生きていくのだろう…終わる日まで。
もう探し出せないだろうと思った当時の漫画が、イラストサイトでサルベージ出来た…
もう30年も前の、拙いものだけど、戒めとして載せておく。